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デフ男子代表

エクセレンス

＜デフ男子日本代表第2回強化合宿＞

6月12日、東京の障害者総合スポーツセンターで、デフ男子日本代表第2回強化合宿が行われた。1日目のこの日は、最初集合時には代表メンバーは2名だったが、ROUGHという東京のチームが助っ人で参加しスタート。徐々に集まり、最終的には須田・辻・手塚・中山明人・日比野・雪森の6名が参加し、ドリブルドリルから一通り行った後、最後に東京の強豪クラブチーム・エクセレンスと練習試合を行った。

全メンバーはこちら

ろうバスケって？
1997年、「第1回全国ろうバスケットボール大会」開催をきっかけに、耳が聞こえない者(ろう者、聴覚障害者、難聴者)の間でバスケットボールを普及させ、発展させることを目的に協会設立。2002年度現在15チームが加盟。
男女とも2005年1月のデフリンピック出場が決定しており、強化を進めている。
健常者のバスケットとの違いは、審判のホイッスルに気付きやすいように黄色い手袋をはめていることのみ。

日本デフバスケットボール協会(JDBA)　公式HPはこちら

6／12（土）
ストレッチの後、ドリブルドリル。互いに教え合いながら行う。続いてのオールコートでのドリブルシュートは、スピードはあるが最後のシュートで粗さが目立つ選手も。2メン、3メンと人数を増やしていく。午前中に最も時間をかけたのは4メン以降。誰が走って、どの人がもらうかなどの約束事を確認しながら行うが、いざスピードをつけてやろうとするとなかなかうまくいかない。人数が少ない分、出来るまで何度も繰り返し、体に覚えさせる。スクリーンアウトなど細かい部分も互いに指摘しながら、午前の予定時間ぎりぎりまで行った。

スポーツドクター辻秀一氏による力を発揮するための心構えについての講義をはさみ、午後の練習の後は、強豪クラブチーム・エクセレンス(平成15年度関東クラブ選手権3位)とのテストマッチ。点数では差が付いたが、得るものの大きな試合となった。

＜今日の練習メニュー＞

・ドリブル鬼ごっこ

・ドリブルドリル

・オールコートドリブルシュート

・オールコート2メン

・3メン

・フリースロー

・4メン(リバウンドから)

・5メン

・トランジッション

・5on5

・練習試合(vsエクセレンス)

この日、女子代表のスタッフ・選手、地元チームなど様々な人が見学。その中で選手に声を掛けながら見ていたのが中山直樹(愛知)。彼も日本代表の1人だ。

「3週間前、練習中に床にぶつけて左手の指と、甲を骨折してしまったので、今日は見学です。所属は愛知ですが、日本代表の一員なので、夕方からの試合も見守ってあげたくて。それから昼過ぎから行われる辻(秀一・スポーツドクター)さんの話が何よりためになるので。
見ていて思うことは、今はもう応用の段階をやるべきだけれど、まだ基礎の中の基礎なんですよね。もちろん自分も含めてまだその基礎が出来ていないんですが。
怪我を治してまた頑張ります。」

＜デフ男子日本代表　練習試合＞
6月12日(金）会場：東京都障害者総合スポーツセンター

＜練習後のミーティング＞
林HCより示された今日のテーマは“何が出来て何が出来なかったか”。まず代表メンバーが1人ずつ述べていったが、「切り替えが遅く速攻を出された」「フォーメーションコールがわからなかったのにそのままにしてしまった」「練習通りの力をだせなかった」等どの選手も反省が多く口をつく。特にガードの須田・中山は、「せっかくコーチが指示してくれたフォーメーションに持って行けなかった」と悔しがった。

続いて、助っ人で練習に参加しているROUGHチームのメンバーから。“代表を見て自分にも出来ると思ったこと、自分とは違う(自分は出来ていない)こと”と林HCからのリクエストで出たアドバイスは次の2つ。
まず、「自分達は聞えない分周りをもっとよく見るようにすること」。「健常者にとってきょろきょろするのは良くないこととされるが、自分達にとっては当たり前のことで、それが出来ていないうちはバスケではない」とのこと。そう思ったきっかけは、「エクセレンスは当たり前のことを当たり前のようにやっていた」のを見ることが出来たからだ。そして、「元気を出すこと」。「自分は代表ではないから試合に出ない。その分、応援したつもりだけど、あまり応えてくれる人がいなかった」。それには林HCも「いい事を言った！」と感謝。「シュートできてもあまり喜ばないし、パスをしてくれた人に感謝の気持ちを示していない」。すると辻が一言。「ありがとうって言いながら(“ありがとう”を意味する手話をしながら)ディフェンスに戻るの？」「指させばえーねん(笑)！皆よくやっとるやろ」と林HCも思わず笑っていた。
また、こういった指摘のほかに、「初めて代表合宿を見たが、日本を背負う気持ちを感じて、憧れた」という意見もあった。

最後にコーチ陣から。林HCが審判をやっていたため試合中全体の指揮をとった坂本ACは、「個人でなく、きちんとチームでバスケットを展開するチームと試合が出来てよかったと思う」。しかし、「指示を伝え切れなかった。伝えたくても皆が集中していて見てもらえなかった時、あきらめてしまった。出来ればマイボールになった時などこちらを見てほしいし、気付いた人は伝え合ってほしい。」と呼びかけ、「自分の経験の少なさ」をわびていた。
次に林HC。①セーフティ②スクリーンアウト③ヘルプ＆リカバー④攻守の切り替え、の4つを挙げた。「①②はいつも言っていること。それが出来ないのは“意識”が足りないから」。そして、「フォーメーションが崩れたら何も出来なくなってしまうが、外国チームはオプションを持っていて、それに対応できる判断力がある。1つしか出来なくなってしまってはだめ。例えばシュートを打った後、自分のマークを捕まえつつコーチ(が指示を出しているか)を見なければならない。」と世界大会を意識した反省を、選手はかみしめるように聞いていた。

明日も強豪・弥生クラブとの試合が組まれている。「明日、今日出来なかったことをやろう。特にコミュニケーションをもっと取り合おう」と決意し、深夜0時過ぎまで及んだミーティングを終えた。

『可能性。』
デフバスケットボール。“聞えない人たちのバスケ”と松本マネージャーから初めて聞いた時、思わず聞き返した。「スクリーンの時はどうするんですか？」
オフェンスでのキャッチボイスやディフェンスでのスクリーンボイスなど、バスケットにとって“声”は欠かせない要素だ。それがないバスケットってどんなものになるんだろう？想像がつかないまま体育館に足を運んだ。

そこで思った2つのこと。
1つはにぎやかさ。キャッチボイスやボールコールを出す選手もおり、声を出して話をしているから一見デフバスケットボールとはわからないかもしれない。冗談を言い合ってリアクションも大きく、笑い声も絶えない。
もう1つは、様々な意味で“部活みたいな”バスケットだということ。
日本代表に対してこの形容は失礼かもしれないが、どの選手もひとつひとつの指示に真剣に耳を傾けている姿がとても印象的だった。ポイントがおさえられていない選手には自然に他の選手が何度も教え、失敗してもあきらめず出来るまでやる。
もちろん、そうして教える側の選手でも、ボールコントロールをミスしてレイアップを落としてしまったり、左手でシュートにいけなかったりといった場面もあった。
部活みたいに一生懸命。でも、部活みたいに粗い。
だから、部活みたいな可能性がある。

林ヘッドコーチ曰く、“皆うまくなりたいという気持ちがあるのがわかるから、教えてあげたくなる”。先に「バスケットには“声”が欠かせない」と言ったが、もう1つ欠かせないものがある。それがこの“気持ち”だ。うまくなりたいという気持ち。そして、仲間を信頼する気持ち。ろう者が使う“手話”は、見ないとわからない。つまり、何かをしながら…というわけにはいかない。もちろん話す側も両手を使うから、何かほかのことをしていてもその手を止め、相手がわかってくれたかどうか確認するために相手を見る。そうしたコミュニケーションの積み重ねがあるから、言うべきことは遠慮なく言うが、ミスしてもそれを相手のせいにしない。チームスポーツの一番大事な土台は、もう出来ているのだ。

だから可能性がある。

エクセレンスチームと

＜取材・文　北村美夏＞

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