<男子日本代表第8次強化合宿>
7月7日、東京の代々木第2体育館で、男子日本代表第8次強化合宿公開練習が行われた。1週間ぶりとなる練習では、選手達は欧州遠征で一回りたくましくなったフィジカル/メンタル両面を披露した。
第8次合宿は11日まで行われる。

参加選手(11名):網野、五十嵐、伊藤、柏木、柏倉、桜井、竹内譲、仲村、古田、渡邊、菅谷(特別メニュー)
全メンバーはこちら
7/7(水)
1週間ぶりの練習となったが、普段通りのウォームアップの後トップスピードで2メン。その後はそのペアのまま、オールコートを使っての1on1。エンドまで行ったら交代し、帰って来てから次のペアがスタートする。1巡目が終わった後、ジェリコHCより
「1週間ぶりなのでつらいかもしれないが、それを乗り越えてボールを取りに行かないといけない。行かなかったら決められてしまう。試合まで時間がないから、集中していこう」
と指示が飛ぶ。それにまず応えたのが桜井。仲村のドリブルに手を出していき、激しいルーズボールを展開。すると、他のペアもだんだん白熱していく。4巡した後水分補給をはさむが、さすがに苦しそうな表情が多く見られる。
続いて3on3ラリー。チーム分けは、白:渡辺・仲村・伊藤・五十嵐、赤:柏倉・竹内譲・桜井、黄:柏木・古田・網野。1往復行ったところで、ジェリコHCが再び止める。
「シュートを簡単に打たれ過ぎ。さっきの1対1のディフェンスをやったよね?」
それ以降も頻繁に止め、ポイントの確認も兼ねて細かく選手に声を掛ける。
「素晴らしくやっても最後に決めないと意味がない」(抜けるがレイアップを外した柏木へ)、「ボールを持っている人にはプレッシャーを掛けるんでしょう」(柏倉へ)、「見ていてはダメだ、いつでもリバウンドに参加しよう」(伊藤へ)など。
<今日の練習メニュー(午後)>
15:25 アップ

15:45

オールコート2メン

15:55 オールコート1on1
16:05 3on3ラリー
16:35 5on5
17:05 2人組シューティング
17:25 集合
17:30 終了
<菅谷メニュー>
15:45〜 ジョグ、各種ステップ

 

ダッシュ
(以上東野コーチと)

16:05〜45 補強(各種腹筋、レッグプレス、側筋、背筋、など)
以下ゲームに参加
17:05〜25 ゴムを使って足首のトレーニング
その後仕上げに5on5。チーム分けは、赤:網野・伊藤・柏木・柏倉・桜井、黄:五十嵐・竹内公・仲村・古田・渡邉 。1週間あいたためかともにイージーシュートが落ちる。序盤は仲村かシューターらしくうまくスクリーンを使いシュートを打っていくが、伊藤のインサイドの1on1で赤が逆転。赤19-15黄で伊藤に代わって菅谷が入ると、柏木らがうまくパスを入れていく。そのあとセンター・ガードを交代させていくが、赤36-31黄から赤に古田が入るとうまくポストとなって得点し、最後は赤53-39黄で終えた。
その後2人組でシューティングを20分行い、1日目を終えた。

特別メニュー中の菅谷
オール1on1:仲村、桜井
5on5:竹内譲、伊藤

<インタビュー>

ジェリコ・パブリセビッチHC

「U-24には、菅谷ともう1人がいき、あとの12人がキリンカップメンバーとなります。1週間以内に発表できるでしょう。菅谷にU-24へ行ってもらうのは、彼には経験が必要だからです。遠征で特別なドリルを行い、走り方など合宿当初から大きく変わりましたが、1ヶ月やっただけでまだ短いのです。彼は今日、この練習のために上京しました。それから竹内譲も、午前の授業に出てから来て、また戻りますが、そうして参加したのは褒めるべきことです。
キリンカップの12人の選手ですが、誰がメインということはなく、調子を見て全員使うつもりです。というのは目標としている世界選手権は長い戦いになるからです。その中では、全員が自分の役割を果たさないといけないので。
その世界選手権ですが、去年と今年でメンバーが多少違うことについては、この(今年の)チームが2006年のためのチームです。この6ヶ月間の練習に参加していないと、それを取り戻すのは出来ないからです。 」

東野智弥アシスタントコーチ(写真上)
元トヨタ自動車アルバルク。欧州遠征よりA代表のアシスタント・コーチとなった。
「日本代表が変化しているのを近くで、自分の目で見られるのは嬉しいし、いい経験になります。ジェリコHCは本当に“心の深い”コーチですね。日本の事情をわかってくれてありがたいです。少しでも力になれるように頑張りたいと思います。やっぱり、ヨーロッパでNO.1になったジェリコHCは世界でやる上での選手の見方を知っていますからね。日本でどうだということではなく、世界の標準ではということを示してくれるので、選手が力強く変わっていくのがわかるし、心の面でも相手をおそれなくなりましたね。
今までになかった新しい日本のバスケットが見えてきたように思います。だからキリンカップは自分自身も楽しみですけど本当に皆さんに楽しみにして欲しいですね。」

柏木真介選手(写真中)
体付きが1回り大きくなり、1on1では渡邉を吹っ飛ばす場面も。
「フィジカル良くなりました?自分ではよくわからないですね(笑)。ただ、ヨーロッパに行って1戦目は“当たりが違う、もっとやらないと”と思いましたが、それからは徐々に慣れて、最終的にはやれるかな、という感じになりましたね。練習でずっとトレーニングもしていたのもあるでしょうね。
1ヶ月間の遠征は、本当に充実していました。普段日本では出来ない経験が出来ました。
キリンカップは…自分的には、ヨーロッパでずっとやってきた、上からアグレッシブに当たるディフェンスと、速い展開のオフェンスを見せたいです。それから周りをどんどん生かして生きたい。本当にそればかりやってきて、通じるというのがわかって自信になったので、それが出来たらなと思います。でも…緊張して何かやらかしてしまうかも(笑)。」

桜井良太選手(写真下)
1番の集中を発揮。だがシューティングではしきりに首を傾げていた。
「久々の日本?暑いですね(笑)。(この日仲村とのマッチアップで何重もスクリーンにかかっていたが)スクリーンでは、スクリーナーに当たらないように自分で押し込んでスペースを開けてマークについていくことを意識していますが、まだ難しいです。
シュートフォームは、割ところころ変えているのでしっくりこないところがありますね。ジャンプのスピードやボールを放つスピードなど、全部を速くしてジャンピングシュートみたいにと言われているので、もっと多く打って自分のものにしたいです。
気持ちの面では…ヨーロッパ遠征に行く前は、試合をしても40点差とかで負けるのかなと思っていたところがあったのですが、HCの言うプレーをやっていったら勝つことが出来たり、相手が強くても勝ち負けがわからない試合が出来たりして、勝負できるんだと正直びっくりしました。外国のチームのすごいところはやはり、勝負所でシュートを落とさないことですね。逆に日本は大事なところが決まらないから、その差を埋めて行きたい。
キリンカップでは、プレータイムが限られてくると思いますが、その中でもヨーロッパで学んできたプレーを見せられればと思うし、見せたいですね。 」



『武者修行を終えて』

会見場に入ってきた古田キャプテンの肌の色が濃くなっていた。野外トレーニングの結果だろう。
公開練習では、次々と出て来る選手の足が近付くほど1回り太くなったように見える。
そして、他のメンバーより少し遅れてロッカールームから小走りで出てきた菅谷の、その走り方さえ遠征前よりだいぶ膝があがるようになっている。
桜井は、ミスした後の表情が、「悔しそう」から「鬼気迫る」の方が近くなった気がする。
伊藤は持ち前のプレーを生かしつつ、より洗練されたゴール下の1on1を見せた。五十嵐もスクリーナーへ何度も絶妙のアシストパス。菅谷はスクリーナーになる動きに迷いがなくなった。どれも遠征前はあまり見られなかったプレーだ。

どれも小さなこと。1ヶ月ぶりゆえの“気のせい”かもしれない。選手に聞いてみてもそれ程意識していない。
でも、裏を返せば1人1人がレベルアップしているから、このチームにいると実感できないだけとは言えないか。

今まで“選手のアンビション”を何度も口にしてきたジェリコHCは、欧州遠征を振り返って「このチームには才能と、ハート、そして勇気がある」と力強く言い切った。
この若い代表チームにはじめて感じた”風格”が、本物かどうかはいざ、キリンカップで。


<取材・文 北村美夏>
塾生コラムメインへ
S−moveメインへ