<第62回早慶バスケットボール定期戦>
6月6日(日)、東京の早稲田大学記念会堂で、第62回早慶バスケットボール定期戦が行われた。
女子は早稲田大が慶応大を封じ、リズム良く攻め続け快勝。逆に男子は慶応大がアグレッシブなディフェンスから速攻を量産し、前半のリードを守りきった。早稲田大はファールトラブルに泣いた。
通算対戦成績は、女子:早稲田22(17年連続)-26慶應、男子慶應30-32早稲田となった。

・OG戦 早稲田46−16慶應義塾 ・OB戦 早稲田43−38慶應義塾

早慶戦って?
1940年(女子は57年)に始まり、1944〜46年の中断を除いて毎年春に行われる伝統ある定期戦。 「名誉ある試合(早稲田大・近森裕佳)」「インカレ(大学唯一の全国大会)の次に早慶戦が大事(慶應大・竹内公輔)」との言葉通り選手の思い入れも強い。
コートサイド、記念会堂の舞台、観客席、通路までもがバスケットファンでぎっしりうまり、多数のOB・OGや応援団も駆け付けるという公式戦とは違った独特の雰囲気の中行われる。
特に男子戦は、2000・01年が1点差、02年が2点差と所属する関東リーグの1部・2部関係なく毎年白熱必至の戦いとなる。



<第62回早慶バスケットボール定期戦 男子>
6月6日(日) 会場:早稲田大学記念会堂


TEAM
 



 
TEAM
89
29
1st
23
77
 
慶應大
25
2nd
11
早稲田大
20
3rd
24
15
4th
19

スターティングメンバー

慶應大:#4志村、#5石田、#10辻内、#15酒井、#16竹内
早稲田大:#4木村、#7高島、#10菅原、#11高木、#18近森

早稲田大は、試合開始のジャンプボールからいきなり#10菅原の3ポイントシュートと幸先良いスタート。#7高島が慶応大の2mセンター・#16竹内にブロックされるもそのリバウンドを自らねじこむなど残り7分6-8と互角の展開となる。しかし、その直後に#7高島が2つ目のファールを犯して交代するなどファールがかさみ、第1クォーター残り5分にはリバウンドから速攻を許し、慶應大#5石田にバスケットカウントを決められてしまう。タイムアウトを取るがじりじりと離され、残り2分16-27と2桁差となる。しかしここで#12押野を入れるとディフェンスが安定し、そこから#11高木、#10菅原の連続3ポイントシュートで追い上げ、残り30秒には23-27と一気に詰める。この後慶應大#7石塚にうまくブザービーターを決められるも23-29とする。

第2クォーターは、立ち上がりやや落ち着かない展開となる。慶應大#5石田に確実に決められる一方で早稲田大はシュートが落ち、残り8分23-34と得点が止まる。その後も#10菅原のリバウンドシュートしか上げられない間に慶應大#16竹内にリバウンド、速攻での豪快なダンクと暴れられ、残り5分25-39で再びタイムアウト。すると第1クォーターと同じく#11高木、#10菅原の連続3ポイントシュートで残り4分31-42と追い上げる。慶應大のミスを誘うなど流れを引き寄せたかに見えたが、#11高木の3ポイントシュートが落ちたリバウンドを慶應大#4志村がディフェンスを見てワンマン速攻につなげ残り2分34-46となる。何とか一桁差で終わりたいが、さらに慶應大のバックコートからのプレスディフェンスにパスミスを2つ犯し、それをどちらも#5石田のシュートにつなげられてしまう。この後は互いに加点できず、34-54で前半を終える。

後半はやはりジャンプボールの落ちたボールを#10菅原がヘルドボールに持ち込み、それを#18近森がフリースローにつなげるなど38-54とする。さらにこの後何度か得た速攻のチャンスもリバウンド・ルーズボールに粘って生かし、40-54にまでする。しかしエース#11高木がブロッキングで4つ目のファールとなりベンチへ。その直後に#4志村に3ポイントシュートを決められ苦しくなる。攻撃の軸を失った早稲田大はシュートセレクションが悪くなるが、#10菅原の得点でつなぐ。すると第3クォーター残り5分、キャプテン#4木村の3ポイントシュートで48-61と再び追い上げるチャンスが巡って来る。#4木村がさらにロングシュート、速攻で残り4分52-63とする。この後慶應大#16竹内をフリーにしてダンクを叩き込まれるが、#18近森が返し、残り2分56-67とついていく。しかしターンオーバーが出てしまい、その速攻で#19竹内にバスケットカウントを決められ、さらに#10菅原が4ファールとなる。この後の失点は何とかしのぎ、58-74で最終クォーターへ。

第4クォーターはいきなりターンオーバーをしてしまうが、慶應大#5石田がストップした場所の床がすべりトラベリングとなって救われる。#10菅原がリバウンド、3ポイントシュートと何とかつなぐも慶應大に簡単に速攻を許してしまう展開で詰められない。そこで残り7分30秒、63-78で満を持して4ファールのエース#11高木をコートに戻す。だがリバウンドに絡みに行った所で先の石田と同じくすべり、倒れた足が慶應大の選手にかかってしまいわずか30秒でファールアウトとなる。こうなると早稲田大は攻め手がなくなり、無理なシュートのリバウンドを速攻につなげられ残り3分30秒67-84と離される。早稲田大#7高島の速攻、バスケットカウントが最後の見せ場となり、慶應大#4志村から繰り出される速攻、#10辻内のカットインを防ぐ力も尽きて、残り7秒で#10菅原がロングシュートを沈めるのが精一杯で77-89で敗れた。

3ポイント、ルーズボールと気を
吐いた早稲田#10菅原
要所でシュートを決めた
慶応大#5石田
表彰式:
慶應主将#4志村


<第62回早慶バスケットボール定期戦 女子>
6月6日(日) 会場:早稲田大学記念会堂

TEAM
 



 
TEAM
 
94
32
1st
16
42
 
早稲田大
15
2nd
6

慶應大

23
3rd
7
24
4th
13



『切実なワセダコール。』

「ワセダ!ワセダ!」
タイムアウト中。モップ中。シュートが決まった時。何度となく起こったワセダコール。会場の記念会堂は早稲田大学敷地内だから、早稲田ファンの方が多くても納得できる。しかし今年のワセダコールは切実だった。

インカレで得点王にもなった朝山正悟と、リバウンドの要・村山範行という2人の柱が抜けた。「今年はチーム力で勝つ(高木)」ことを目指しているが、まだ浸透しきっていない。何より気になったのは、オフェンスの軸がない、ということだ。

シュート力のある高木に打たせるにしても、厳しいマークをはずさなくてはならないが、積極的にスクリーンをかけに来る訳ではない。練習のスクリメージではスペースに同時に入った高木と味方の選手がぶつかってボールを取られる場面もあった。さらに劣勢に立つと、『打つべき時』ではないタイミングで『打つべき人』ではない選手が打ち急いでしまい、そのリバウンドを速攻につなげられるという場面も目立った。

シュートが決まらなければ練習で取り入れていたようにバックコートから当たることも出来ないし、速攻を出されてはウリであるはずのディフェンスも意味がない。1人1人が“自分がしっかりしなければ”という責任感を持ってやっていることはとても良いが、逆にいざという時チームの考えがばらばらになってしまっている。

今日は前半で20点のリードを許し、後半何度か10点差近くまで追い上げるが再び突き放される展開。もう1本、の代わりにまた1つのミスが出た。確かに、高木の5つ目のファールは運がないと言えばそうだし、今日は普段選手を鼓舞している倉石コーチの大きな声とジェスチャーも見られなかった。だが「あきらめるなよ!」「最後まで!」とベンチから飛ぶ声までもどかしく感じるくらい、コートの選手にはよりどころがなかったし、いなかった。唯一奮闘した菅原も、ターンオーバーなどポイントガードとしての安定感にはまだ経験を要するし、良いディフェンスを見せた押野もプレータイムは長くなかった。「誰で勝つのか」「何で勝つのか」「今年の早稲田はどういうカラーのチームなのか」。再確認が必要なのではないだろうか。

関東大学リーグは1年に1回。早稲田は1部に所属するが、全8チーム中、7・8位は入替戦という厳しい仕組みになっている。開幕は9月11日。それまでに、早稲田大学が改めて方向を同じくする“チーム”となっていることを願う。

<取材・文 北村美夏>