<第80回男子関東大学リーグ>
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究極のトランジットバスケットで1部に旋風を起こす
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<戦力分析> ロスターはこちら |
オーソドックスな編成ながら1人1人の能力が高く、正確で速いバスケットを展開する。スピードがあり強烈なリーダーシップを発揮する志村、クレバーで攻守ともにレベルの高い石田、中・外と得点力のある辻内の4年生3人がチームの核。それを203cmで日本代表でも活躍する竹内、左利きで体の強い酒井の2年生コンビが支える。この5人の代役を一手に務めるのが4年生でリバウンドが魅力の関。1年生の香川らも少しずつ経験を積んでいる。応援組もチームの勢い作りに一役買っている。 |
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<HEAD COACH PHILOSOPHY> |
『50年に一度のチャンスなら』 佐々木三男コーチ
1部昇格1年目にして、4週目を終えて7勝1敗の首位と快進撃を続ける慶応大学。その裏には、雰囲気作り・体調管理・スタイルの理解…という積み重ねてきた理由があった。 「今年の春からA・Bチームを分けないで一緒に練習をやってます。これは今年の4年生から申し出があったものです。今まではBチームが応援していてもどこか“他のチーム”のような感じがありました。こうして一緒に練習するようになって、同じコートでやっていることでまとまりもできて、チームが1つになっています。今調子がいいことにも影響しているかもしれないですね。 今のチーム状態は、怪我人が珍しくいなくて悪くはないですね。春までは集中がとぎれたりすることがありました。しかし、元々賢い子達ですから、こちらの言うことを理解して、集中してやれています。 リーグ前は上位と当たる前半戦は5分(8試合で4勝4敗)くらいかなと思っていました。それくらいなら入れ替え戦には行かないだろうと。なので今の状態は“できすぎ”ですね。 今勝てている理由は、トランジット(展開の速い)のゲームを1ゲーム通して行えていることでしょう。今までの1部の男子チームにはなかなかそういうチームはなかったので、戸惑っているところもあるのではないですか。バスケットの本質はトランジットだと思っています。自分は女子を見ていたので、女子のトランジットのバスケットをこのチームに導入しました。1年目はやはり反発もありましたが、随分形になってきました。正直言って、今のチームの完成度は自分が予想していたものを超えています。それはオフェンスでは辻内・石田という外もドライブもできる選手がいることと、ディフェンスが機能するようになったことですね。 昨年までは競った試合で最後に相手のインサイドの要の選手にゴール下でやられてしまうということが多かったのですが、今は逆になっています。それは竹内の功績ですね。彼は非常に賢いので、ゲームに対応してプレーすることができます。例えばこのリーグの初戦で、第1クォーターすぐに2個ファールをしてしまいその後もうファールはしてはいけないということになると、きっちりファールにならないブロックショットをするようになったりなどです。日本代表でプレーしたことが大きいですね。 この後も勝ち続けるには、なによりも怪我をしないことが大切です。うちはスタートが1人でも欠けると苦しくなりますからね。怪我をしないために今年は基礎トレーニングを充実させました。そして、食生活についても夏の合宿などで取り組みました。自己管理も大切です。春に怪我のあった酒井も、その時みんなに迷惑を掛けたという実感があるのでしょう、トレーニングをしっかりやって今は大学入学以来のいい状態です。 うちの貴重な控えの関も昨年の身体の不調から今年は復活してくれました。これは本当に本人の努力があったからです。彼は練習も一生懸命に取り組みますし、チームにとってもみんなががんばろうという気持ちになって、いい影響を与えてくれています。 今年のチームの目標が何でもいいので何かの大会で“優勝”することです。優勝することで今までの苦労の結果がわかりますし、その次が見えてきます。元々はインカレと思っていたのですが、今の状態で周り(OB)が40何年ぶりの優勝だとか言い始めていて、50年に1度のチャンスなら…とちょっと色気が出てきましたね(笑)。今のところ優勝に対するプレッシャーはないですが、本当に優勝がかかった試合になるとまた違うかもしれないですね。しかし、とにかく今は慶應らしいプレーで1戦1戦戦っていくだけですね。」 |
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<CAPTAIN'S EYE> |
『最後にみんなで結果を出したい』 志村雄彦選手(160cm68kg/G/仙台高出身) 最後の年に1部でプレーできることになったばかりでなく、優勝争いにまで絡んでいる。チーム一丸となって戦う中で、志村のめいいっぱいのプレーはどの試合でも変わらない。 1部は最初から最後まで大変 「今のチーム状態はとりあえず勝っているのでいいんじゃないですか。リーグ前は5割くらいでと思っていましたからね。 初戦の専修戦は勝つつもりで臨みました。途中追いつかれた時は、ここまできたら勝たないとダメだとい気持ちでやりました。 1部はやはり強いですね。2部にいた時は上位と下位で力の差があって、後半の上位との対戦までにチーム力を上げればいいみたいなところがありましたが、1部は最初から最後まで大変です。うちは先行されると弱いので、とにかく最初を頑張ろうと言っています。試合の後半になって競ってきたりするのは、相手がうちにあわせてくるからでしょう。1部のチームはわりと第3クォーターで追いついて第4クォーターで勝負、みたいなところが多いので、逆にうちは入り方を良くして前半で離そうと思ってやってます。」 |
一生懸命走ってくれる選手のために正確なパスを 「プレータイムが長いことは、きついとは思わないです。入ったときからそうですし、入る前からそうなるって言われてましたから(笑)。 リーグ開始の頃はシュートが入らなくて…まず1本がほしかったですね。でもそう思えば思うほど、ノーマークで躊躇して苦しいシュートになっていました。あの時はもう練習するしかなかったです。専修との2試合目に自分のシュートが入っていたら勝っていたと思いますしね。うちはウィングの2人(石田・辻内)がいいので、ディフェンスが寄っていくと自分や酒井が空いてくる。そこで決めると相手は『どこまで守らなくちゃいけないんだ』って感じになるでしょう。だから自分のシュートは“最後の砦”のようなものですね。 身長については、それほど自分ではミスマッチ的なものは感じません。周りの人からもそういわれるのはきっと“慣れ”でしょうね。自分は自分より小さい人とやることはないですから(笑)。自分の感じでは180cmくらいまでは差はないと思ってます。大きな相手に対してはディフェンスは休みなく動くことでカバーしていますね。相手がミスマッチをついてポストアップしてきても、今のPGはそれほどポストプレーが上手くないので逆にこちらがやりやすくなったりしますよ。うちは中に(竹内)公輔がいますからね。 パス出しは、高校の頃先輩の柏倉さんやチームメートだった宍戸(明治大)から教わりました。その時言われたのが「受け取る前に周りを見ておけ」ということです。そして受け取ったら素早くパスを出すことでした。そうやって習ったことや大学に入っての練習のおかげで、前よりずっとPGらしくなりました。それにこういうパスは一生懸命走ってくれている選手のためにも、しっかり出さないといけないです。(竹内)公輔なんかリバウンドをとってそこから走ってくれていますから、パスを通してあげないとダメですよね。」 コートに立てない選手の頑張りを練習で見ている強み 「勝つために必要なことは、まずは練習をしっかりやることです。練習でしてないことは試合ではできないので、ゲームを意識した密度の濃い練習ができることが大切だと思っています。あとはチームとして1つになることです。どんなにすごい“スター”がいても、1人では勝てない。チームの全員が意識をしっかりもつことが必要です。そういう意味でも、今年からA・Bチーム一緒に練習をするようにしました。そこでコートに立てない選手たちの頑張りを実際に見ているので、自分たちコートに立たせてもらっている選手は彼らの分も頑張ろうという気持ちになります。また、応援する方も“自分たちのチーム”という気持ちが強くなってより盛り上がった応援ができます。そういう意味で、チームがまとまることができると思いました。 ここで最高の仲間に出会えました。その仲間と最後に代々木で勝ちたいです。自分は高校の時全国大会で優勝しているので、その優勝というものをみんなにも味わってもらいたい。最後にみんなで結果を出したいです。」 |
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<PICK UP!> |
『自分の仕事はバランスを取ること』 関淳平(4年) 誰の代わりにも出ることのできる関選手は去年、バスケットをできない時間を味わっていた。 「腹筋を切って手術をしました。それで2ヶ月くらい運動ができなくて、体重が8kgくらい減りました。元々身体は鍛えていたのですがかなり筋肉が落ちてしまって、それから頑張ってトレーニングをやりましたね。自分は身長がないので大きい選手とやりあうには身体を強くするしかないですから」 大きい選手とやるのは慣れている そして今年、スタートの5人に長いリーグでは貴重な息をつく時間を与えるのはもちろん、ファールトラブルなどどんな場面でも流れをつなぐシックスマンとして活躍するまでになった。 「ポジションは、代わった人との兼ね合いなので大体2〜4番くらいですかね。元々は4・5番をやっていたので、自分より大きい人とやるのには慣れていますしその方がやりやすいくらいです。自分が出る時は誰かのファールトラブルか流れが悪くなった時なので、まずはコートの上の5人の気持ちが切れないようにすることを気をつけています。うちはスタートの5人の力が大きく1人が代わるとバラン |
スが悪くなりますから、そこで少しでも自分ができることをやってバランスを保っていければと思います。自分の仕事は決まっているのでそれをただ一生懸命やるだけですね。」 勇気付けることに出る意味がある 「慶應は自分のように高校の時はたいしたことがない選手が多い中に志村とか(竹内)公輔とかが入っていて、ともすればチームがバラバラになりそうなところもありますがみんなで協力しながら1つにまとまるようにしていってます。今年は1部ですが、自分のようなインターハイにも出ていないような選手もその中で頑張ってやっているというところを、少しでも見てもらいたいですね」 |
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『運動量は負けない』 石田剛規(4年) 「今のチームはゲーム毎に成長していて、なかなかいい感じだと思います。コンビネーションや苦しいときの粘りなどチーム全体の力がアップしてきていると思います。初戦の専修には春に負けていたので、ここに勝つことを目標に練習してきました。ここに勝てれば他のチームにも応用できますしね。負けるとは最初から思っていなかったです。 夏の練習は、特にディフェンスを頑張りました。自分たちより大きい選手が相手でも負けないようにするためです。オフェンスの方はずっと今の5人でやっているので、合わせの部分がよくなりましたね。スタートの5人のうちの1人でも欠けるとバランスが悪くなるので、ミスをしないように気をつけていますし、ファールアウトまでいかない戦い方というのができるようになってきました。あと、控えの(関)淳平が出た時は、他のメンバーがカバーできるようになっています。」 長所短所をわかった上で、自分の力が出せている 「自分自身、大学に入って少しした位から高校の時とは意識が変わってきました。去年くらいから少しずつ注目されるようになったのですが、それは2年間やってきて、通用するもの・しないものがわかってきて、その中で上手く自分の力が |
出せているからだと思います。今年の春スプリングキャンプに参加できたこともいい刺激になりました。レベルの高い選手たちの中でやれて、学ぶものが多かったです。 自分のプレーのいいところは、“運動量”ですね。チームカラーが“走って、動いて、守る”っていう感じなので、運動量は他の人には負けないと思います。」 このままのいい状態で最後まで 「これからの目標は、まずはこのままいい状態でリーグ戦を最後まで戦えるようにすることです。優勝は目標ではないですね。もちろんできたらいいと思っていますが、もしできなかったとしても別に落ち込むことではないし、いい形でインカレにつなげられればいいと思っています。」 |
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『今は1試合1試合が楽しみ』 辻内伸也(4年) 「今チームは最高の状態ですね。予想以上の出来です。チームがまとまっていることを試合中でも実感できます。去年はまだ3年生でチームを引っ張るということができませんでしたが、今は4年生がまとまって声もよく出して、チームを引っ張ることができています。控えが少ないことは全く辛くないわけではないですが、ファールはしない方ですからプレッシャーもないですし、今までもそうでしたから気にならないですね。」 いろいろなことが出来るプレーヤーでありたい 「自分は元々ドライブが得意で、それを生かすためには外のシュートが必要と思って3ポイントシュートを練習するようになりました。それが入るようになると、3ポイントシュートをよく打つようになったので“3ポイントシューター”のイメージがあるかもしれません。でも、点を取るだけでなくアシストで周りを活かすプレーも持っていたり、いろいろなことが出来るプレーヤーでありたいと思ってます。 相手のディフェンスのマークが厳しくなることは、そういう風にみられているということで、自分としてはうれしいですね。それに、厳しければそれだけ“その上から決めてやろう!”という気持ちになります。 1部と試合をしたかったので、今は1試合1試合が楽しみです。自分はいつも |
“試合の勝敗を決めるような働き”をしたいと思ってます。先の日大との1戦目のように、最後に試合を決めるシュートを決められるのは本当に気持ちいいですね。 これからも慶應らしい、自分たちのバスケットをしていきます。一生懸命やりますので、是非試合を見てほしいです。優勝目指してがんばりますから、期待してください。」 |
<取材日 2004年10月8日>
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<取材・文 渡辺美香/人物写真・構成 北村美夏> |