<第80回男子関東大学リーグ

早稲田大学(1部)
全員がオールラウンダー、堅守から速攻を狙う
創部 1920年
平均身長/体重
(登録)
184cm/78.5kg
構成 4年12名、3年8名、2年10名、1年9名
2004年度成績 関東トーナメントベスト16
関東大学新人戦5位
2003年度成績 関東トーナメント8位
関東大学新人戦ベスト16
関東大学リーグ1部5位
インカレベスト16
公式ページ http://www.waseda-basketball.com/


<戦力分析> ロスターはこちら
 小柄だが全員が同じ動きができるチーム。エース高木・オールラウンダーの高島・パワフルガード菅原の3年生3人が軸で、インサイドは落ち着いたキャプテン木村と強気のルーキー近森がバランスを取る。PFのバックアップには久保田上。ガードのバックアップは豊富で、シューター風間・ディフェンスの良い岩隈前川、スピードとオフェンス力が持ち味の木下らが控える。また出場時間は短いながら、運動能力の高い花尾、声を出し続けチームを盛り上げる201cm早川・169cm浅野のでこぼこコンビら4年生もチームを支える。
インサイド ★★★☆☆
アウトサイド ★★★☆☆
サイズ ★★★☆☆
★★★☆☆
逆境での強さ ★★★★★

<HEAD COACH PHILOSOPHY>
『ROAD FOR DREAM』 倉石平ヘッドコーチ

 大きな体に大きな声がトレードマークの倉石ヘッドコーチ。今年から全面的に指揮を取る。
「見ての通り、うちはディフェンスから速攻のチーム。8チームの中で一番背が小さいので平面で表現する事が狙い。オフェンスは器用さもないし絶対的なエースがいるわけでもないから、そんなに注文はつけない。
 やろうとするディフェンスは、相手によって違う。ゾーンやダブルチーム、ショウディフェンスやスイッチ…どれもやらないと20、30点差で負ける。
  ただ今のところ、こちらが示していることに対する理解度は非常に悪いと言わざるを得ない。人間の当たり前なこととして、チームが勝っていると相乗効果が生まれて理解もしやすくなるしまとまる。自分が犠牲になってもという気持ちが出てくるが、負けると逆に俺がやらなきゃ、俺が俺が、となる。そうなると勢いは出てこない。勢いっていうのは、外の何か大きなパワーを使うことだから。うちとは逆に今の慶應なんかは、そうだよね」

妥協したらコーチではない

 だが、選手への要求のレベルを下げることはしない。作戦ボードを使って説明、修正を繰り返す。
「大体、有名校から来た選手はそつなくずるいプレーもできて、一方の無名校から来た子はずるさはないけれどたくましいもの。でも今の早稲田にはそのどちらもいない。それに対して他のチームの子はインターハイで優勝して成功体験を持っていたり、U-18で日本を代表する責任感を味わったことがある。
 今の選手、特に上級生の多くは試合の前に“こうなったらどうしよう”とビビッてしまっている。性格でしょう。だから1、2年生の出番が多くなる。特に1年生はたくましい。やることがね。こちらが言ったことに反発もしてくるし、へこたれたままで終わらない。
 でも性格を変えることなんでなかなかできないし、言ってもどうにかなることではないからコントロールするしかない。でもそれはレベルを下げるのとは違う。妥協するのは嫌。妥協したらそれはコーチじゃない。そういうコーチはプレーヤーからしたら優しくて“いい”指導者かもしれないけれど、それだと仲良しグループで終わってしまって勝つチームにならない」

今は我慢してでも後で成功できるように
「後々に成功体験をしたら、信頼が生まれると思う。すぐはわかることじゃない。選手からすれば今、ガンガン言われるのは居心地が悪いのかもしれないけれど、それはそういった経験がなさ過ぎるから。今まで“エリート”できて挫折を味わったことがないんです。
 他のチームで1部の看板を背負っているところは、皆そういう針のむしろに座るような経験をずっとしているはず。でも早稲田は今まで上の人も“いんじゃない”という感じで選手は怒られた事がなく、チームにカリスマがいなかった。自分がどうかと言ったらわからないけれど、少なくとも影響力はある。選手がそれを真摯に受け止めていれば練習でへこたれていても試合では勝てるだろうし、影口を叩いているようでは勝てない集団のまま。
 自分は負けているのはいや。先の専修戦(10/2・3:いずれも10点差で惜敗)も、怪我人がいたり苦しい中でベテランを使えば勝てたかもしれないけれど、目の前の試合より順位に関係あるところで勝てるようにしたいから、わざとじっと我慢していた。前川や風間なんかはあの2試合がすごくいい経験になったと思う。
 練習でも試合でも勝つために意識して色々なことをやっている。下級生や4年生をゲームで出したり、練習では同じドリルでもたまに目的は同じだけれど違うメニューに替えてモチベーションが続くようにしたり。スクリメージもいつも同じメンバーではやっていない。頑張れば誰にでもチャンスがあるという雰囲気ができるようにしている」

 その雰囲気を感じ取ってか、選手たちは1人1人が必死に取り組んでいる。少しずつではあるが、掲げるバスケットが確実にチームに浸透しつつある。
「コーチとして目指していることはもちろん日本一になること。学生でNo.1になって、天皇杯(オールジャパン:地域の代表〜JBLチームまでが戦うトーナメント)で実業団と対等に戦えるようになるのが夢です。」

<CAPTAIN'S EYE>
『声を出し続ける』 木村行秀選手(192cm85kg/PF/洛南高出身)

 4週目を終えて1勝7敗。この結果から何ができて何ができなかったかを、木村は1つ1つクリアに話した。それをふまえてこれから何をすればいいのかも、もちろんしっかりと意識している。
「ここまでの結果の1つの原因は、早稲田のペースで試合に臨むことができなかったことですね。出だしにリードしてそれを維持していこうという目標があって、1勝した時の大東戦(3週目)はそれができていました。専修戦(4週目)の1戦目もできていましたが、技術というより攻める気持ちが全然なくてチームが受け身になってしまって、専修のペースになってしまいました。技術的なことは、今まで練習しているから練習中にはできるけれど、試合中にやるとなると技術うんぬんよりどれだけ意識できるか、声を出せるかということになります。これまでは、その気持ちが少し弱かったかなと思います。
  これからは基本に戻ることですね。ディフェンスでミスをしないとか切り替えをはやくするとか、小さいのでしっかりボックスアウトするとか。誰が聞いても当たり前のことを徹底できるかがカギですね。できれば結果がついてくると思います。」
“声”から自分達のペースに
「ミスした時にチームが下を向いてしまう時間があるのですが、ミスをした人こそが声を出さないといけないですね。そしてそのミスに固執せず、次のプレーでは何をするかを考える。ベンチから声を掛けるのはもちろん、中の5人もハドルを組んで次のことを話し合えるようにしたい。ミスの後の声出しが大事ですね。コーチにタイムアウトを取ってもらわなくても5人が中で修正できるようにしたい。そうすれば、波がなく強いチームになると思います。ベンチも、ノっているとき、早稲田ペースの時はすごいはしゃいで、励ましたりいい声が出ていますが、ミスが続くと今はどうしてもその声が投げやりになってしまう。「やれ!」とか「声出せ!」とか抽象的で、出てる人が何をやっていいのかわからないまま。そこで“ボックスアウト”とか基本の声を出せれば中の5人も意識しやすくなると思うので、基本に戻って声を出したいです。
 もちろん4年生もですね。自分の声でチームが盛り上がるんだったら出すべきだと思います。黙り込むと他の皆も出しづらい環境になってしまうから、“バカみたいに声を出す!”くらいの何もかも捨ててゲームに集中するところを見せれば、チームも自覚が出てくると思います。」

キャプテンとして、4年生として
「自分は結構、周りから見ると大人しいとか、ガツガツしたタイプじゃないと言われるんですけど、試合では誰よりも声を出さなきゃと思っています。と言ってもまだまだですが、『ディナイ!』とか『ボール!』とかの声を後ろから出していれば自然とチームに浸透すると思うから、基本的な声を1番出したい。後は沈んだ時に次を修正する意味でのハドルを組んだり。ガードがやってくれると嬉しいけれど、やっぱりキャプテンとして自分が集めるのが一番いいと思います。
 去年までは、声だしやハドルも意識していなかったけれど、4年生になって初めてチームにとって必要なんだなと思いました。でも、今でも大史(早川・4年)には“キム、声出てないよ!”って言われてしまうのでまだまだですね。自分はほっといたら何もやらなくて(笑)、それじゃだめなんですけど言われないとだめなんです。でも大史が言い続けてくれるから、自分も出し続けないとなと思います。もう試合会場に響くくらいの声を出します!」

<PICK UP!>
『自分のプレーでリズムを変えたい』 高島一貴(3年)

 中も外もできて気持ちも強い。2週目の途中に怪我で離脱したが、今は元気に練習に参加している。
「やっていることは頭ではわかるのですが、体がまだ言うことを聞かなくてストレスはありますね。今チーム状態が良くないし、自分が入ることでチームがちょっとでも変わってくれればと思います。
  試合を外から見てみて、今までやっている立場としては細かいところまではわからなかったのですが、“自分だったらどうする?”と考えたり意識が改善されて、すごくいい勉強になりました。」

ディフェンスを体で覚える 
「ディフェンスは、コーチが相手チームによって変えてくれます。頭では理解しているのですが、動くと全然違いますね。その戸惑いが試合に出てしまったかなと思います。それを改善したいですね。やっていてそんなに難しいというわけではないのですが、“こうきたら、こうする”と頭にあるとして、そうじゃない時の対処法を体で覚えないといけないところですね。それがなくて崩れていくケースが
多いので、意識していきたいです。」

走ってリズムを作る
「持ち味は走ることです。結構誰でもできることだけれど、わかっていても走れない人もいる。誰か1人走ることでスペースができて攻めやすくなりますよね。自分を犠牲にして周りを生かすほうが楽しいんです。
 今はチームでは自由にやらせてもらっています。やりやすいですね。今まで型にはまったプレーというか、自分の動きができていなかったのですが、去年朝山(正悟・現日立)さんから“自由にプレーしていいんだよ”と言われてから、持ち味が出せるようになったんです。
 今年は3番(もとはPF:4番)に挑戦しています。最初は全然ダメでした(笑)。でもやっていることやポイントは一緒で、走ってリズムを作って、いいタイミングでもらったらシュートを打っていきたいと思います。」

3年生がまとめられるように
「日大と大東の2戦目、日体戦は勝てた試合だったのかなと思います。試合経験が少ない分マイナスな面が出てきてしまって、なかなか力を発揮できない。でも皆それにも慣れてきたし、いかにチームで力を出せるかだと思います。
 ミスした時、暗いし声が出ていないのが今ですよね。周りがミスした時に沈んでしまう。そういうときに一言謝るなりするのは誰にでもできるし、ムードが悪くならないようにしたいです。
 他のチームは4年生主体だけれど、うちはあまり出ていない状況で先頭に立って引っ張る人がいないんです。そうすると1番出ているのは3年生だから、その中で誰がってわけではないけれど気付いた人が責任を持ってまとめるようにしたいです。試合中集めたり。まとまってきてはいると思いますよ。少しずつ改善されています。
 これからは同じくらいの力のところと当たるといっても、危機感はすごいありますね。入替戦は味わっているだけに、もうあの場所には立ちたくないです。コーチもこの3週がヤマと思っているだろうし、みんな燃えています。勝たなきゃいけないというプレッシャーはありますが、それをいかにモチベーションにしてプレーできるか。負けられないです。」

今が踏ん張りどころ
「倉石コーチとのコミュニケーションは最初はあまりなかったんです。でも最近は思っていることを言ってくれるようになりました。それでみんな意識できているというのもあります。自分はけっこうコーチと話すようにしていますね。指導者の考えている事がわからないとチームがまとまれないので。前は結構そうだったんです。でも倉石さんになって、聞いたらけっこう話してくれるんですよ。だから学生の方が理解していかないといけないですね。
 とにかくやるしかないです。誰にも頼れない状況で自分達が引っ張るしかない。ここでまとまれれば次につながると思うし、自分達の代で2部ではやりたくないっていうのがすごくあります。今が踏ん張りどころですね。」

『与えられたことを自分らしくやりたい』 福島孝太(2年)

 プレーでも話すときも、とにかく一生懸命。このチャンスを掴みたい、とにかくプレーがしたい、という強い気持ちが伝わってくる。
「Aチームは今年の夏に少し上がって以来2回目です。大東戦の後、倉石コーチに言われました。怪我人が多かったことと、夏合宿で頑張ったところを見てもらえたからだと思います。でもうまいからではなくて、これは単純にチャンスだと受け止めています。だから毎日真剣ですね。自分のプレーができたら残れるし、できなければ使われない。
  うちはガードが多いけれど、自分みたいなスタイルの人は他にいないんですよ。スピーディな展開を作っていくのは賭けかもしれないけれど成功したらすごくアツい。プレータイムは短いかもしれないけれど、もし出られたらその短い時間でどれだけスパークできるか。大変だけれどだからこそやりがいがあるし、それは自分にしかできないことだと思います。」

怪我と戦った1年
 土浦日大高時代は全日本ジュニア(U-18)に選出される力を持ちながらも、怪我に苦しみ長くBチームで過ごした。
「実は入学する春休みから膝が痛かったんです。もともと弱かったのを筋肉でカバーしていたんですが、引退して動かない間にそれが落ちちゃったんですね。それでいきなりやったからいためてしまって、去年の6月に手術しました。何かやっぱり悔しかったですね。チャンスをものにできなくて、出られない状況になって。中学の時も高校の時も1年生の時から出してもらっていたから、そういう環境におかれるのは初めてで…。
 でも、おかげで気持ちそのものをプレーに出せるようになりました。力強く、速くなったって言われるし、自分でもわかります。今年はやればできるんだな、って去年の悔しさを取り返すために人の倍やる気持ちでいます。」

呼ばれたら絶対に結果を出してみせる
「自分はベンチにいても、常にコートに気持ちを置いておけるんです。だから“あ、今呼ばれる”ってことも感じ取れる。出たら絶対結果を出せる、勝負強さが持ち味です。あとはシュート力。速い展開を作れて点も取りにいける、弱気にならないガードです。
 その自分らしさを失わないで、安定感とコーチの信頼を得ていければと思ってます。そのためにはとにかく経験を積むことですね。まだAチームに入って1ヶ月もプレーしていないので、当たりとかの違いがあるけれど、練習でもまれているうちに慣れてくると思います。そうしたら、自分はもともとミスするプレーヤーではないから大丈夫です。
  身長(170cm)は全然気にしていないです。したらそのスケールのプレイになってしまう。横の動きで全然カバーできますよ。人より運動量を多くすればいいんです。
 今は与えられたことを自分らしくやりたいですね。今はそれしか考えていません。自分らしいプレーがそこで出せれば信頼も少しずつもらえると思います。タイプの違うガードが揃っているので相手によって出し方は違ってくると思いますが、チームが勝つことを第一に考えて、要求に応えたいという心構えで3週間やりたいと思います。」

<取材日 2004年10月7日>

<取材・文 北村美夏>