自分を信じて〜松阪大学・西川純司〜

         一本足?!

細いピッチャーだな、と思ったのが最初の印象だった。
西川がマウンドに上がり、投球練習を始めてすぐに彼の特徴は細いだけじゃないことに気がついた。
ワインドアップから状態をグニャリと後ろにひねる。バッターから見ると背番号「19」がはっきりと見えるまでひねる。
この時、彼の右足は左足の裏に隠れてしまいフラミンゴのように一本足で立っているように見える。
そこから上体を沈ませながらボールを前に離す。130キロ出るか出ないかの真っ直ぐだが、90キロ代のスローカーブが真っ直ぐを速く感じさせて神奈川大学のバッターはなかなかタイミングをとれていなかった。

西川は言う。
「膝をひらかないようにしよう、と思って試行錯誤しているうちにあんな形になりました。うちづらぞうと言われますけど、自分ではそんなに意識していなんですよ。慣れればあの体勢(一本足)もつらくないですし」

最初は手こずっていた神奈川大学だったが、そこはさすが昨秋の神宮大会準優勝校。徐々にタイミングをつかんでいき、六回に3安打を集中させて逆転に成功した。

「やっぱりまだまだ精神的なものが足りないなと思いました。自分はまだ完投できるピッチャーじゃないんですけど、それでもある程度まではしっかり投げないといけないなと思います。徐々に疲れさせられたんで、その辺が甘いなと思います。練習の時から神宮を意識するようにしないとダメですね。マウンドに立っただけで緊張しちゃいましたし」

帽子を軽く握りながら西川がそう言った時、ひさしの裏に書いてある言葉が目に入った。

『 自分を信じて』

「マウンドだとひとりじゃないですか。周りに仲間がいてくれますけど、自分が頑張らないと意味ないんで。自分を信じないとはじまらないですから」

最後に、ひさしの文字が見えなくなるくらい帽子をギュッと握り西川はこう言った。

「また、神宮に帰ってきます」


   横から見るとこんな感じです


S-move編集部 京都純典
 愛知県岡崎市出身。父の仕事の都合で、中学3年から高校卒業までアメリカ・ニューヨーク州で過ごす。 和洋、プロアマ問わない、根っからの野球好き。中日ドラゴンズの日本一を願ってやまない「福留世代」。
S−moveメインへ