<デフ男子日本代表>
〈4〉『トップ・スピード・トランスポーター』

中山 明人
163cm/G

前へ前へとボールが進む。代表で一番のスピードを持つガードの中山は、試合中も練習中も変わらず積極的。コーチに何度も質問し、キャッチボイスも大きく出す。「大きい声が出てる?自分ではあまり意識していない(笑)。でも声を出すと、自分自身を奮い立たせられるかな。」

ちなみにコートを離れても、同じ代表メンバーの手塚と顔を合わせる度にマシンガントーク。「わかり合えるし、お互いよく知っているし、長い付き合い。その上、同じデフファミリー(家族もろう者)だから、何か不思議だけど通じ合えるものがあるんです。」

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バスケットを始めたときのことを教えてください。
「高校の時、スラムダンクが流行っていて、昼休みにその真似ばっかりしていました。それと、NBAのマイケル・ジョーダンのプレイを見て感動しました。最初の引退の頃かな。友達がビデオを持っていて、一緒にあのダンクを見てすごい!と。」

部活ではやっていなかったのですか?
「部活は野球部でした。1番バッターで遊撃手!甲子園?は目指せないですよ(笑)。ろう学校の野球部は軟式なんです。」

ということは大学ではじめて部活に入ったんですね。ちなみに大学生活はどうですか?

「びわこ成蹊スポーツ大学というところで、スポーツに関する勉強をしていて、一応、体育の先生を目指しています。でも、中学・高校でもう勉強、マジメにやっていなかったからちょっと大変…(笑)。」

では、バスケットをやるようになって良かったこと、逆に大変だったことは?
「今は、日本代表の一員として、色々な強豪チームとゲームが出来て、うまくなれるチャンスがたくさんあること。
大変はことは、どちらかと言えば自分は個人主義な性格だから、バスケットは特にチームワークが要するので大変。だいぶ慣れてきましたが…。」

チームでの役割や自分の持ち味、、課題は何だと思いますか?
「持ち味はドリブル。課題は全部!ドリブルの課題は、バリエーションが少ない、利き手ではない左手が苦手、抜くときや運ぶときなど状況による使い分けが出来ていない。代表や大学の練習だけでなく、個人的にも徹底的にやってボールが体の一部になるようにしたい。NBAの選手は学校に通うときドリブルしながら行ったって言いますよね。
次に シュートの課題は、3ポイントが入らない、打たない、ジャンプシュートも打たないこと。アーチやひざ・手首の使い方などまだまだです。それからパスも、ロングパスできないし、精度が低い。
最初は好きではなかったけど、代表に選ばれてから、テレビを見たりして勉強しています。目標はNBAのジェイソン・キッド。技術もそうだけれど、彼みたいにとにかく信頼されるガードになりたい。」

なるほど。他に好きな選手はいますか?

「1番はずばりMJ(マイケル・ジョーダン)。それと、気持ちの部分ではアレン・アイバーソン。サイズ(アイバーソンの身長は公称183cm)に関係なくゴールに向かう気持ちはすごい。
それから田臥選手は、好きというよりも尊敬するところがあります。NBAへの挑戦には自分も勇気付けられたし、苦しい時に彼のことを思い出すと、僕もやってやるという気持ちになります。でもウインターカップの決勝や短いニュースくらいしか、プレーを見たことがないんですよね…。」

では、
最後に中山選手にとって“代表”ってどんなものですか?
「国の代表と言われてもピンとこなかった。実際、バスケットの経験が浅い僕が選ばれてびっくりした。でも強くなれるチャンスと思って、頑張っている今日この頃です(笑)。そして今、代表という重みを少し感じるようになってきました。」

(2004年6月13日インタビュー)

<取材・文 北村美夏>

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