<UNIV2004:OTHER GAME>
〈2〉『切実なワセダコール。』(6/6:早慶定期戦) レポートはこちら

「ワセダ!ワセダ!」
タイムアウト中。モップ中。シュートが決まった時。何度となく起こったワセダコール。会場の記念会堂は早稲田大学敷地内だから、早稲田ファンの方が多くても納得できる。しかし今年のワセダコールは切実だった。

インカレで得点王にもなった朝山正悟と、リバウンドの要・村山範行という2人の柱が抜けた。「今年はチーム力で勝つ(高木)」ことを目指しているが、まだ浸透しきっていない。何より気になったのは、オフェンスの軸がない、ということだ。

シュート力のある高木に打たせるにしても、厳しいマークをはずさなくてはならないが、積極的にスクリーンをかけに来る訳ではない。練習のスクリメージではスペースに同時に入った高木と味方の選手がぶつかってボールを取られる場面もあった。さらに劣勢に立つと、『打つべき時』ではないタイミングで『打つべき人』ではない選手が打ち急いでしまい、そのリバウンドを速攻につなげられるという場面も目立った。

シュートが決まらなければ練習で取り入れていたようにバックコートから当たることも出来ないし、速攻を出されてはウリであるはずのディフェンスも意味がない。1人1人が“自分がしっかりしなければ”という責任感を持ってやっていることはとても良いが、逆にいざという時チームの考えがばらばらになってしまっている。

今日は前半で20点のリードを許し、後半何度か10点差近くまで追い上げるが再び突き放される展開。もう1本、の代わりにまた1つのミスが出た。確かに、高木の5つ目のファールは運がないと言えばそうだし、今日は普段選手を鼓舞している倉石コーチの大きな声とジェスチャーも見られなかった。だが「あきらめるなよ!」「最後まで!」とベンチから飛ぶ声までもどかしく感じるくらい、コートの選手にはよりどころがなかったし、いなかった。唯一奮闘した菅原も、ターンオーバーなどポイントガードとしての安定感にはまだ経験を要するし、良いディフェンスを見せた押野もプレータイムは長くなかった。「誰で勝つのか」「何で勝つのか」「今年の早稲田はどういうカラーのチームなのか」。再確認が必要なのではないだろうか。

関東大学リーグは1年に1回。早稲田は1部に所属するが、全8チーム中、7・8位は入替戦という厳しい仕組みになっている。開幕は9月11日。それまでに、早稲田大学が改めて方向を同じくする“チーム”となっていることを願う。
〈1〉『かなわなかった日筑戦。』(4/29:日筑戦) レポートはこちら

日本体育大学の男子バスケットボール部員は約140名。日筑戦では、この中から2軍A・B班、3軍1〜3班の4年生が出場することになっていた。
しかし、アップ中に筑波側のボードが破損するアクシデント。
「みんな4年生で、1年間楽しみにしていて、3ヶ月前から練習してきたので残念ですね。日筑戦は試合、というよりも祭りという感じが強くて、皆で盛り上げてやろうとしたんですけど・・・」
と4番のユニフォームを着ていた坂口直人は言った。

 筑波側も、この日の試合を楽しみにしていた。練習後集合時間を伝えられたとき、どよめきが起きるくらい早朝に出発。女子のジュニアバーシティの試合中には、アップの声がコートまで響いてきた。「2軍は(スポットが当たることが)これくらいしかないから、写真ちゃんと撮ってよ!」とスタッフに冗談も言っていた。
「日本人初だそうです。最後なのでいい形で勝ちたかったですけどね。最初はどうにかなるかなって思ったけれど、しょうがないですね。これから切り替えます。」
とこちらも4年の上原達彦。 

最初はお祭り気分のまま携帯で写真を撮っている選手もいたが、協議が長引くにつれて表情が硬くなった。男子ジュニアバーシティ中止を告げる場内放送中は会場がしんと静まり返った。当初16時から女子戦、17時から男子戦となったが、結局は全て中止に。 

 決定後、着替え終えた上原はそっと目をぬぐっていたが、「見間違いですよ〜」と微笑み、アップ中ダンクに挑戦した選手に気遣いを見せた。もちろん、JBLの外国人選手が何度となく激しいダンクをしても何ともなかったのだから、ボードにもともと小さな傷があったとも考えられる。 

 しょうがない、とどちらの選手も口を揃えた。しかし、比較的さばさばしていた1軍メンバーとは裏腹に、2軍メンバーは困ったような笑顔を浮かべていた。誰も悪くないし、もちろん他にも部活をやっていてよかった、と思うことはあるだろう。
   
 それでも、“バスケットの聖地”代々木第2体育館でプレーする夢は叶わなかったのだ。  

<取材・文 北村美夏> 

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