<UNIV2004:関東大学リーグ>

〈終〉『トップエイトの攻防』 (11/1、2) レポートはこちら

 敗者と勝者は分かたれた。
 関東大学リーグの1部はわずか8チーム。その下位2校と2部Aの上位2校が毎年入替をかけて激戦を繰り広げる。
  リーグは1ヶ月強と短く、その間にチームの状態を変えるのは難しい。それを考えると、勝って自信をつけ、1週早く終わった分準備もしっかりできる2部のチームはいい状態でこの決戦に臨める。一方の1部のチームは1つでも上の順位を目指してリーグを戦うから切り替えなければならない。
  1戦目は追う立場の2部のチームが勝った。
  2戦目は、完全に勢いに乗った東海大がまず昇格。そして、青学大が最後に点差を詰めて試合には負けたが得失点差で昇格を決めた。
 関東大学リーグの1部はわずか8チーム。好選手が関東各大に集まる中で、1部と2部上位の差はほとんどない。だが、勝敗は8チームとそれ以外をはっきりと分ける。
  1年に1度のリーグでは、同じチームでトップエイトを取り返す、もしくは挑戦するチャンスはない。新チームで1から戦い、この決戦の地を目指すしかない。そしてまた新しい涙と歓喜が生まれていく。

〈10〉『苦しくても』早稲田大・#22近森裕佳選手(1年・PF) (10/3:1部リーグ4週目) レポートはこちら

 「はい、はい!」ボールを呼ぶ声が響く。1年生ながらスタートを務め、プレータイムも長い。村山の抜けたインサイドで1部校のセンターを相手にしなければならず、ものおじしている暇は与えられていない。
「専修のインサイドは高校や大学の全日本に選ばれたことのある人ばかりで、わかっていたけれど“強いな”という印象でした。でもそこまでやれなくもない。逆にあっちはなめくれている分こっちが一生懸命やれば通用する。でも、疲れた時は相手の能力の方が上でした。追い上げていって逆転できなかったのもそう。すごく悔しいし、チームの課題です」
 くやしい。その気持ちが近森を大きくしている。
「この2戦は、オフェンスではスペースを取ることや流れの中からカットインやシュートを
することを心掛けました。止まった状態から1on1だと相手が高くてブロックされてしまうので、横の動きやスピードでカバーするためです。
でき具合は…波に乗ったときはできたけれど、試合のリズムの中で自分達がうまくいかない時間帯が来たときに踏ん張る力をつけないといけないですね。昨日の4Qや今日も5分間くらい無得点だった時があったけれど、そこでの打開策がなかった。」
 
 この日の敗戦で通算1勝7敗。順位に関係の大きい試合はこの後に控えているとしても、1つでも負ければ入替戦が迫ってくるのは変わりない。
「勝てていないことが今ずっともどかしい。 昨日も今日も競ったし、日大・日体・大東戦の2試合目も勝てたのにもったいない試合をしてしまいました。今本当に苦しい。どういう方法でもいいから、あと6つ勝つことを考えていきたい」
 勝ちたい。その気持ちが近森を大きくしている。
「リーグは負けても続いて、そこは高校と違うから気持ちの切り替えは難しい。でも初めてのリーグといっても、初週の日大戦の最初に少し緊張したくらいです。早稲田の代表として出させてもらっているから、勝手なことををやらずにとにかく倉石HCの言うこと、チームでやろうとしていることを理解してやるだけです。」
 やる、と言ったら本当にやってくる。その2つの気持ちが目に見えてわかる選手だから、逆境でもコートに立ち続けていられる。


〈9〉『いつかのための試練』早稲田大・#14高木賢伸選手(3年・SG) (10/3:1部リーグ4週目) レポートはこちら

 「課題がいっぱい見つかった試合でした。」
うつむき、しばらくの沈黙の後にしぼり出した。
「昨日も今日も自分達のペースに持って来れたのに、最後は個人技でやられてしまった。勝負を分けたのは要所でのシュートです。自分が良くなかった。意識しすぎて手投げになったので次からは気をつけたい」

 高木は今試練を味わっている。もともとスタートを務める5人のうち4年生はキャプテンの木村だけだった。そのうえ同学年の高島・久保が怪我で離脱、司令塔も菅原の調子が良くなく下級生が務める状態。1度崩れてしまうと、離れていった波をもう1度持ってくることができない。
「デイフェンスは悪くなかった。でも今日は昨日よりボックス内でやられました。メンバーが昨日と少し違うのも多少はありますが、昨日は3・4・5番がきちんとボックスアウトしたからリバウンドも取れたのに、逆に“昨日は取れた”という意識から今日はガードも含めておろそかになってしまった。
オフェンスでも点差を詰めた時もっと勢いに乗って一気に行かないとだめだった。相手も対応してきたし、こっちも“大事に”となって思い切りがなくなってしまいました。」

 オフェンスの負担は他の選手よりはるかに重い。相手もそれがわかって厳しいマークをしてくるし、他のポジションがプレッシャーに負けて高木のシュートまでつなげられなかったり打たされてしまったりという場面も多くある。さらにSGにはエースが多くディフェンスでも気を抜けない。だがそれでも、高木の役をできるのはやはり高木しかいない。
「ディフェンスは良くなってきたのでそのイメージを忘れずにやりたい。うちはディフェンスができてオフェンスができるっていうチームだから。そのためには中の5人がもっと頑張らないといけないですね。怪我人のことは言ってもしょうがない。今日も自分だけ止めればいいってことはないと思うけれど、そうやって守られていたとしても本当にそれで止められてしまった。その中でも、やらないといけない」

  ジャンプシュートを決めた後、高木は一瞬、下を向く。そのシュートが今は気休めにしかならない。でも体はすぐにディフェンスの体勢を取って、まっすぐ前を向く。きっと、その美しいシュートがいつか大きな試合を決めるシュートになるための今、なのだ。

〈8〉『NEVER GIVE UP』 大東大・#4月野功大選手(4年・PG/CAP) (10/3:1部リーグ4週目) レポートはこちら

  「自分達でやろうろしていたことがわかっていたのに、持続してできなかったことがくやしい。バック(ディフェンスに帰ること)はできていたけれど、そこからスクランブル(ランダムにマッチアップ)で守る時に声が出ていなくて相手1人に2人がいってしまったり、オフェンスでも速攻のミスなど全部細かいところ。負けが続いていて元気がないこともあるけれど、昨日追いついた後や、今日もリードしていたのにミスで離されてしまいました。勝負どころでのもうひと踏ん張りが課題です。自分も3Q時のノーマークをもう少し入れていれば全然違ったと思います…。」
 わかっているのにできないもどかしさ。試合直後にロッカールームの前の廊下で座り込んでいた姿からも、試合終盤1秒でもはやくボールを運んでシュートにつなげようとしていた姿からも、月野のもどかしさはにじみでていた。
 試合では大東が流れをつかめそうな場面もあったが、法政にくらいつかれるとあっさりと押し切られた。コートで5人が集まってもその場だけ。勢いを作るはずのベンチの声も聞こえてこない。月野のゆがむ表情ばかりが必死だった。
「とにかく、今は気持ちの切り替えが大事ですね。みんなでやって、ベンチも全員が意識して盛り上げたい。もう後は気持ちの問題。1人1人が違うことをやっていたら勝てないので、チームで勝つことを皆が思ってやらないといけないですね。とりあえず1つ勝てば変わってくると思うから…、来週です。」
それでも月野はあきらめていない。


〈7〉『3番目の風格』法政大・#8高久順選手(2年・PF) (10/3:1部リーグ4週目) レポートはこちら

  法政のスタートを務めるのは、5番ポジションが#9町田(3年)、4番ポジションは#7亀井(3年)だ。#8高久はその2人のファールがかさんだ時、リズムが悪い時に出てくるいわばインサイドで“3番目の男”。だが、器用でディフェンスを見ながら中でも外でも攻められ、激しく体がぶつかるゴール下でも逃げず、何よりチームのために声を出すことができる。

 「今まで1勝しかしていなくてずっと下位でしたが、これから同じくらいのレベルの相手との対戦が続き星を落とせない中で今週2連勝できたことは嬉しいです。日大戦で1勝できたことでいけるんじゃないかと思えるようになったし、それからこの1週間はBチームの人たちが練習の時大東大のオフェンスのパターンを覚えてやってくれたことが大きい
です。ディフェンスが本当に良くなりました。この2戦は、ディフェンスで我慢したからこその結果ですね。チームの雰囲気は良く、リズムが良くなってきました。皆で声を掛け合うなどコミュニケーションができています。これからは、まず1戦1戦たたかうことが大事ですね。相手がどうより、自分達がディフェンスを頑張るだけです。」

 #9町田を先週の怪我で欠く中、オフェンスのリズムが悪い時にはゴール下で堅実に2点を重ね、終盤の苦しいところでも冷静にペイント内を守り切った。卒業後JBL入りした山田(日大→トヨタ自動車)・勝又(大東大→OSG)らなみいるセンター陣と戦った昨年の経験、トーナメントと新人戦ともに大会最終日まで厳しい戦いを乗り越えた今年の経験が、町田の穴を埋める以上の働きにつながった。
「そうですか?そう言ってもらえると、嬉しいです。」
そしてこの試合でも自信をつけただろう。その自信は、やがて“風格”になる可能性を秘めている。


〈6〉『前へならえ』慶應大・#4志村雄彦選手(4年・PG) (10/3:1部リーグ4週目) レポートはこちら

  「今日は苦しいところもあり、そこで自分が声を出さないと崩れてしまうと思って声をかけました。プレーでは、苦しいところでシュートを決められたのでそういう意味では今日は良かったです。あとはもうちょっとターンオーバーを減らせればいいかな」
 よどみなく、きっぱりとした口調で志村は言った。
「今週2つ勝ててよかったしほっとしています。いつもそうだけれど、自分の中で気持ちを盛り上げて出だしから走れるようにと思って臨みました。ここまでの成績は、やっぱり練習からしっかりやってきたのが出ていますね」
 積み重ねてきたものが当然のように出ているだけ。頑張っている人だけが使える言葉だ。
「シュートは好きですけどうちには打つべき人がいるので、Gとしていいパスをすることを心がけています。自分は苦しいところで決められればいいかな。そういうところでパスが来た時?“来たー!”って思って打ってますよ(笑)。決まれば応援がドカンとなるでしょ。応援の力は大きいです。僕達は部員全員が同じ時間に同じコートで練習しているから、会えば声を掛け合うし頑張っているところも見ている。なのにコートに立てない人達がああして応援してくれているので、マネージャーやスタッフも含めてそういう人たちに僕達は応えないといけないですよね。」

  今の慶應の勢いを作っているのはプレーと応援の相乗効果だ。その一体感は普段の練習から生まれている。部員全員での練習は1面のコートに人が溢れんばかりになるが、その中でもすぐに見つけられるのがこの志村だ。フットワークでもディフェンスドリルでもいつも真ん中の一番前。そして体をめいいっぱい使っている。ディフェンス練習最後の“3分間ハンズアップ(3分間ハンズアップのままコーチの指す方向にステップスライド)”で、1人、また1人と自分に負けていく中で、最初から最後までスピードも声もステップの強さもただ1人変わらない。
「手を抜かないためにその場所でやっています。去年からそうだし、キャプテンだからではない。声と背中で練習の大切さを伝えられたらと思います」

真ん中の一番前。そこが志村の定位置だ。
「あとは怪我なくやれればと思います。“公式戦4年間皆勤出場”がかかっているので。毎日の試合で少しでも気を抜いたら、終わりです。」


〈5〉『この1歩から』中央大 (10/2:2部リーグ5週目) レポートはこちら
 
 この日の中央大にはスタンド・ベンチ一体となって声を出し続け、接戦を乗り切る雰囲気の良さがあった。今リーグ、連勝スタートをきったものの続く明治戦はいずれも逆転されて2連敗。翌週の拓殖大にも敗れていたが、今日は久々の勝利だった。
 これまで多くの試合を経験してきたが、明治戦はベンチで見ていた#6熊谷尚之(4年・写真左)は言う。「起用は今言ってもしょうがないこと。それより、いつでも出た時にしっかり仕事をできるよう準備をするだけです。」拓大戦で復帰し、この日も要所で能力を発揮した。「4Qに追い上げられるパターンをふっきれたのは、若いチームにとってプラスになったと思う」。
  そしてこの日、顔を見せた石田晃章は笑顔で選手・スタッフに声を掛けられていた。「久しぶり!元気?太ったんじゃないの」。この日は戦況をスタンドで見守っていたが、彼の胸には期するものがあった。「近況は特にない。ヒマです。今バスケットをしない毎日を過ごしていますが、物足りない。しばらく考えていたのですが、自分勝手だけれどチームに戻ることをお願いしています。でも、うまく言えないのですがやっぱり自分勝手にチームを離れて、夏の合宿などいられなくてチームにたくさんの心配と迷惑を掛けたので、戻るからにはしっかり責任を取らなくてはと思います」。 「来年また石田が戻ってきたら、いいチームになると思いますよ」(#9小野)とチームメートも復帰を心待ちにしている。

  その“若いチーム”の中でも経験のある熊谷・石田の2人が不在の時もチームを一身に支えてきたのは#9小野竜智(3年・写真右)だ。「今年のメンバーは自分も含めてスタートを経験した事がない選手ばかりで、最初は慣れることに精一杯だった。今日、4Qに追い上げられても踏ん張れたことは収穫です」。勝敗が決まった後のフリースローでも、ベンチから「明日のために離せ」と声を掛け雰囲気を引き締めるなど誰よりもチームのことを考えている。この日の勝利でほっとしたような笑みを見せた。

「まだ青学・東海(1・2位)戦が残っているので、この勢いで1部入替戦を目指したい」(小野) 。中央大にとっての“リーグ”が、この日やっと始まった。


〈4〉『策士』青学大・#10岡田優介選手(2年・SG) (10/2:2部リーグ5週目) レポートはこちら

  残り30秒で大屋の同点シュートにつながるバスケットカウントを決め、延長でも2本の3ポイントシュートを沈めた。
「とにかく気持ちよく勝てたので嬉しいし、良かったです。今日は自分達のやってきたこと、得意なことをしようと、相手が相手なのでいつもより集中していました。本当は相手によって変わったらダメなんですけど、みんな気合が違いましたね」

  だが、試合はやりたいことをさせてもらえない展開が続く。
「リードされていても、ここで集中を切らしたら開いてしまうから、持ちこたえてついていけば大丈夫と思ってやっていました」
そうして気持ちを切らさなかったことがどんでん返しを呼び込んだ。
「最後のFTは外れて結果オーライですね。一応入れるつもりで打ったんですけどいいところに落ちてくれてラッキー。逆に入れていたら1点負けていて東海ボールでどうなるかわからなかった」
 すでにシューターとして名高く、このリーグ中も常に激しいマークにあっているが、1週目の明治戦、2週目の拓殖戦、そしてこの青学戦でも延長ではそのディフェンスをあざ笑うかのように3ポイントシュートを決めとどめをさしてきた。
「延長になると決めるイメージがありますか?そんなことはないつもりなんですけど(笑)。シュートはチームの流れの中で打っていきます。打たせてくれるので、打つだけですね。と言っても、ディフェンスのつき方を見るなど40分何も考えずにやっているわけではないんですよ。いつも同じ打ち方で打つことを心掛けているのですが、逆にその40分でのリズムとちょっとタイミングをずらすとディフェンスはついてこないんです。“あ、打たれちゃった”という感じで」

 勝負所で決めてきた裏には、この一瞬の判断があった。
「もちろん疲れはあるけれど、へばったら毎日何のために走っているのかということになります。延長はこっちも疲れているけれど相手も疲れているんです。そこでどれだけ勝ちたいと思えるか。自分達は3回目なので経験があったし、最後は集中力が相手より少し上だったかな。
今日は自分の仕事ができました。ディフェンスも自分にしては上出来です。明日は今日のことは意識せず、自分も何点取るとかではなくとにかく勝って気持ちよく終わりたいと思います。」

〈3〉『マケズギライ』東海大・#11石崎巧選手(2年・PG) (10/2:2部リーグ5週目) レポートはこちら
 
  「今日はそんなにディフェンスが悪いということはなかったけれど、オフェンスで崩しきれなくていいシュートを打てず、自分達でリズムを崩す場面が多かったですね。うちはディフェンスからというチームで、具体的にそういう練習をしているわけではないけれど春も夏も走ることはずっとやってきた。だから切り替えが早くできる時はよかったけれど、走れていない時の差がありました。練習不足かな、と思います。」
敗れた東海大の石崎は、いつものように静かに話した。
「残り30何秒で4点勝っていたことで、安心ではないけれどそういうものがありました。
でも、延長の雰囲気は悪くなかったです。追いつかれたからって気負うようなメンバーはいない。でもスタミナがなくて息切れしてしまった。これまでの練習ですね。この試合で4Qまでは来られても、このリーグでここまでは来られても、自分達が全力で練習する時間が短かったのに対して、青学は本気で勝ちにいく試合を経験していた。そういうところが勝負に表れました。」

 延長残り2分。6点ビハインドとなったタイムアウト明け、石崎の放った3ポイントシュートは力が入っていた。リバウンドからのもう1本も、リングに嫌われた。
「今日の自分のプレーはシュートで焦ってしまってよくなかった。走って回りに点を取らせることを意識していたけれど、3つか4つくらいミスがあったのは反省しています。強い相手でも自分たちのプレーを出し続けないといけないですね。ディフェンスも、#10岡田選手についている時はいっぱいスクリーンが来るし、彼自身も体力があっていっぱい動いてくるので4Qまではそれなりに守ったけれど延長まではもたなかったです。やっぱりそれもいつもの練習だと思う。」

練習不足。彼から出た言葉は、彼に似つくかわしくなかった。U-24ではチーム練習後に最後の1人になるまでシューティング。大学の練習も、「1番最初に来て、1番最後に帰る」(#5稲葉)。これ以上頑張る事ができないくらい、いつも頑張っているように見えると言うと、彼はきっぱりと言った。
「このレベルでは、皆が頑張っているんです。自分は頑張る中でも、目標を見失ってテンションが落ちる事がある。本当にいつも全力でやりたい。」
そして少し笑みを浮かべて、続けた。 「自分は負けず嫌いだから…負けたくないんです。」


〈2〉『もう1度』法政大・#5小川伸也選手(3年・G) (9/19:1部リーグ2週目) レポートはこちら

  1部開幕週・日体大戦は、2戦目延長に持ち込みながら1ゴール差で惜敗。そして今週は20点差、30点差で専修大に敗れた。法政の1人1人の力はトップレベルだが、勝ちが遠い。試合後、4年生も声を掛けるのをためらう中、4番を背負った山田謙と、キーマン・小川は、佐藤コーチとずいぶん長く話していた。
「今の気持ちは大ショックですよ。いけそうな気がするんだけど…。夏の合宿で5on5を多くやれなかったのが、ここに来て響いているかもしれませんね。
ガードとして、パッシングを心がけているのですが、インサイドの選手が外に出て、Gに回す前に打たされてしまっていました。ディフェンスからと言っているけれど、オフェンス中心になってしまっている面がある。やっぱり点が取れないとフラストレーションがたまってディフェンスが崩れてしまって、相手に好きなことやられていますね。特にリバウンドを今日もやられてしまいました。
もう1回、ディフェンスから立て直すしかない。リーグに入ってからでは本当はだめなんですけど、ディフェンスをやってみて自分達の悪いところがわかってきたし、今日3Qも一時いい感じになってこうすればうまくいくなっていうことがわか
りました。オフェンスはインサイド中心でやろう、としていましたが、やってみると点が取れない時間もある。だからインサイド“だけ”にこだわらず、考え方を変えていこうと、さっきコーチとも話しました。
来週の日大には勝ちますよ。勝てないと去年の再来(開幕5連敗で2部入替戦へ)になってしまうし、今年は入替戦に行ったら気持ちが落ちてしまってどうなるかわからない部分があるし。
うちは2・3年生主体で若いチームだし、やっぱり リーダーシップを出せる人がいないんですよね。だから自分が頑張ろうって決めました。今までは、同じ学年で4番を背負っている山田に気を使っている面も実はあったんですが、もう少し自分を出した方がチームのために良いみたいですね。
それから、うちは仲が良いのはいいのですが、その分なぁなぁになってしまっていたところがあるので、それをもう1度お互い厳しくやりたいですね。本当のチームとして、どう脱皮できるか。先に言ったディフェンス、リバウンド、それから山田の1on1にもやっぱり波はあるから、頼り過ぎずフォローをいつも練習からやって、いつも声を出してくれている亀井が腐らないように応えることもしたい。
チームプレーは難しいけれど、来週までにもう1度、立て直してきたいです。 」
〈1〉 『帰ってきた男』新井靖明(日体大) (9/11:1部リーグ1週目) レポートはこちら

新井靖明が帰ってきた。
「最初は緊張しました。」 久しぶりのスターティングメンバー。「1回ベンチに戻ってからですね、慣れたのは。」

秋田・能代工高時代には、1試合73得点、うち3ポイント21本という驚異的な数字をたたき出したこともある。日体大1年次のインカレでも3ポイント王に輝いたシューター。
だが、怪我に苦しんだ。左足のテーピングは高校時代からのものだ。
登録メンバーに入りながら、なかなかコートに出てこない新井。そんな彼のことを しかし、観客も味方も、敵さえも待ち望んでいた。

今日、復活を印象づけたのは第3クォーター。それまでのワンゴールを争う展開から、3連続3ポイントシュートで一気に10点差とした。しかし、本人は「せっかくセンターがパスをくれたのだから、もっと決めて楽にしてあげたかった」と言う。
「ディフェンスは個人的にも(高校時代のチームメート・山田謙治とマッチアップ)チーム的にも全然ダメだった。一度離れた時にきっちり日体大のバスケットをしていたら、もっと点差をつけられたと思う。オフェンスもボールをもらえるような動きが少なかったから、これからもっと頑張りたい。」
その頑張りの成果が、たくさんの人の目に触れることを願う。

<取材・文 北村美夏>

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